約1年前に予告しておきながら、その後すっかり放置していた自動車鉛筆について、やっと重い腰を上げることにしました。
このエントリーに掲載していますが、旧コーリンは株式会社コーリンの名になるまでに2度、社名を変更しています。最初が、創業者の名前そのものをとった「赤木廣八商店(大正5年3月~昭和22年6月)」、その次が短い期間ですが「株式会社インセンスシダー製作所(昭和22年6月~昭和22年12月)」。
自動車鉛筆は、最初の「赤木廣八商店」時代のブランドの一つ。こちらに赤青鉛筆さんから頂戴した資料があります。
赤青鉛筆さんによると、上記は「坂本胖編「全国文具界大観」文具界社 1925年(大正14年)国会図書館所蔵に掲載された、赤木商店の広告です」とのこと。
「コーリン」も社名になる前は、数あるブランド名の一つだったのですが、大正14年にはなかった模様ですね。この時にあるブランド名は、
・Piece(後にハイピアスへと育っていくブランド)
・Lincoln
・Fortress(赤青鉛筆さんが詳しくエントリされています)
・Moon glove
・Motor car
の5種類。他にももしかしたらあった可能性は否めませんが、少なくとも主力はこの5種類。
そしてタイトルにある「自動車鉛筆」は5つめに記載されているMotor car。
商品を見ていきましょう。
ひもで縛ってラベルをくるっと巻いただけ。この時代特有のパッケージです。
もうちょっと寄ってみてみます。
ここで注目したいのは、”自動車”の文字よりも、むしろ「H.A.P.CO」の刻印。これは「Hirohachi Akagi Pencil Co.,Ltd」の略(と思われます)で、社名がコーリン鉛筆に変わってからも、しばらく製品に押され続けた文字です。※「CO」は省略されることもあります。
例えば、下のNo.686の古いパッケージにもH.A.P.の文字が。
商品に刻印/ラベルに印字されたマークにも注目してみます。
カタログの自動車の絵がオープンカータイプで斜め前からの描写だったのに対し、ラベルは屋根付き・真横からの描写に変わっています。H.A.P.COの文字がありますから赤木廣八商時代の商品であることは間違いないとして、どうやら大正14年よりあとにトレードマークの変更があった模様です。…とここまで書いてふと思いついたのですが、この商品、必ずしも赤木廣八商時代に限った商品ではないのかも。その後のインセンスシダー株式会社でもこのブランドを使っていたかもしれませんし、その後の株式会社コーリン鉛筆時代の初期の頃かもしれません。なにせラベルにはブランド名しか記載しておらず、社名は印刷されていないのですから。
「Motor car」というブランド自体は赤木時代に生まれたものですが、「自動車鉛筆」という商品そのものは赤木以降も作られた可能性があるのでは?…キレイにまとめようと書き出したのですが、新たな疑問が生まれたところで今回は終わります。
これまでは収集の対象は鉛筆や什器などのモノだったのですが、今後は紙モノの資料も対象にしていかねばならないと思った次第。こりゃ大変だ(笑)。
2011.1.30(日)エントリー50分後追記
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…読み返してみたら、ずいぶんと中途半端な内容ですねぇ。書きなおすかもしれません。
こちらへは初めてコメントさせていただきます。
自動車鉛筆、心待ちにしておりました。
確かに「赤木商店」「インセンスシダー製作所㈱」「㈱コーリン鉛筆」
、いずれの時代の製品か決め手がないように思われます。
軸塗装はワニスではなく明らかに初期の硝酸綿ラッカーであり、
このことから1930年代以降の製品である事は間違いないと思います。
また商標の車のデザインが戦前特有の流線型ボンネットタイプですから、
この辺も手がかりになるのではないでしょうか。
(国産のダットサン1937年型あたりに似ています。)
おそらく最大の決め手となるのは軸にある「丸囲みC」の記号です。
このアルファベット記号がある鉛筆は
戦前~戦後すぐにかけてのもので、
戦前の輸出検査とその後の価格統制・公定価格制度に関係している可能性大です。
また画像にはありませんが、
帯紙の裏面に「東東3608」と印刷されておりまして、
これは鉛筆方面ではなく、印刷・用紙方面の統制記号かと思われます。
いずれにせよ戦前鉛筆に見られる「丸囲みアルファベット記号」については
わからないことが多いので、
皆で協力して解明していきたいものです。